安易なタワーマンション節税は国税に指摘されやすい

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安易なタワーマンション節税は厳しくなる

相続対策の情報は世の中にたくさんありますが、難易度の低いもの高いもの、リスクが高いもの低いもの、実効性が高いもの低いもの、色々あります。中には効果があるかどうか微妙なものもありますから、実際に実行するにあたっては専門家の指示を仰ぐのは必須です。

 

今回は不動産オーナーとして陥りがちな相続対策の失敗例と、最近に何かと話題のタワーマンションを用いた相続対策の是非を見ていきます。

 

 

アパートを購入したが、空室だらけで評価減よりも資産価値が落ちた失敗例
元々投資やアパート経営などを手掛けていて、経験やノウハウがある方であればそれほどリスクは高くないのですが、それまでアパート経営などをしたことが無い方がいきなり始めると痛手を被る確率が高まります。

 

相続税対策として現預金の不動産化を考えるのは決して間違ったことではなく、十分な計画の元、さらに専門家の助力の元で行う場合は効果が高い手法となります。しかしコンサルティング料や委託料などを削減するために素人が単独で実行すると、途端に失敗のリスクが高まり、またその結果のダメージが大きくなる手法でもあります。

 

近年は少子化などの影響で地方都市のマンションは空室が目立ち、物件購入にかかった借入金の返済もままならないケースが増えています。

 

大ヒットしたアメリカの著名な不動産投資家ロバートキヨサキ氏の著書「金持ち父さん 貧乏父さん」シリーズの影響もあって、安定した家賃収入で老後に備えるという行動に出た方も多くいらっしゃいますが、経験やノウハウの無い方は大半が経営に苦慮してるようです。

 

予定した入居者数を確保できないため、資産の不動産化による評価減の恩恵よりも負債の方が膨らみ、かといって売るに売れずに首が回らないという悲鳴に似た相談もよく受けます。

 

不動産経営は素人が手を出すと痛い目を見る可能性が非常に高いものですが、うまくできればその効果は抜群です。興味がある方はご自身でよく研究して、実行に移す場合はさらに実績のあるコンサルタントや業者さんを味方に付けて行うようにしましょう。

 

タワーマンションを用いた相続対策について
近年、都心部などのタワーマンションの上層階を購入することで相続対策とする事例が爆発的に増えました。

 

本来土地の価値は路線価などから、また家屋であれば固定資産税評価額など、市場価値とは異なる公的な指標から算出し相続税の計算の基礎にするのですが、タワーマンションの場合上層階に行くにしたがって市場価値が雪だるま的に膨れ上がり、また相続税評価額としてはその市場価値ほど上がらないため、その差異が反映されない分、お得に節税できるというのがタワーマンションを利用した相続税対策のイメージです。

 

このお得感を利用した不動産業者の大々的な広告宣伝効果もあって、タワーマンションを購入する資産家が爆発的に増えたのです。明らかに相続税逃れを狙ったこの行為に、国の税収を確保しなければならない国税当局は焦りました。

 

そして実際にタワーマンションを用いた相続税対策をけん制するために、今後相続税評価を上げて相続税対策としての恩恵を薄める施策を講じる他、ある事例ではタワーマンション購入による相続税の減税分を否認し、これに反発した納税者との争いでも裁判上で勝訴しました。

 

国税当局によって阻止されたタワーマンションによる相続税対策
相続税の対策はどうしても被相続人となる方が死亡する時期に近い期日で実行することになります。生前贈与などもそうですが、相続発生前3年間にされた贈与は相続財産に組み戻されて計算されます。これは相続税対策の効果を薄めるためですね。

 

タワーマンションの事例の場合、被相続人の死亡日に近接した時期に購入したタワーマンションの効果を利用して相続税の税額を下げることができても、その後すぐに売却してしまうと投機的な性格が強く、また「不当な相続税逃れである」と当局に判断され、税務調査を経て将来的に追徴課税を課せられてしまうということが実際に起こり得るのです。

 

税務署は相続財産の評価方法についてある程度裁量権をもっており、基本的な指針となる財産評価基本通達によらずとも「他の合理的な方法による評価」が許される余地があります。

 

「合理的」とは税務署にとっては都合がよく、要するに「より多く税金を徴収できる」方法を用いることができるということです。

 

これをより確実なものにするため、平成27年10月にはタワーマンションを用いた相続税対策を考えている人に向けて注意喚起の記者発表を行ったほか、タワーマンションの特に上層階など市場価値と相続税評価額の落差が大きい物件についてはその評価方法自体を改めることを検討しています。

 

国税当局によるこうした一連の対応によって、タワーマンションを用いた相続税対策は今後その恩恵がさらに薄くなっていくことが予想されます。

 

まとめ
・経営視点のない相続対策のアパート経営は失敗しやすい
・タワーマンション節税は、国税が本気で取締りをする方向で安易な取り組みはしないこと

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