滞納者への給料差押について

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未払い家賃:給料差押

家賃を支払わない人には、給料から強制的に払ってもらうこともできます。私自身は、滞納した場合、保証会社もしくは、連帯保証人からで100%回収していますが、給料の差押についても理解しておくとよいでしょう。

 

アパートやマンションを他人に賃貸する際には、必ず「入居申込書」という書類を事前に書いてもらいます。そこに、賃借人の住所、氏名、年齢のほか、勤務先や部署名、連絡先まで書いてもらいますが、そもそもなぜ部屋を貸すのに勤務先やその連絡先まで知る必要があるのでしょうか。

 

一つの理由としては、その人の支払い能力や属性を確認する「入居審査」としての側面がありますが、実はもう一つ重要な意味があります。それは家賃が滞納した時の「給料を差押えする」ためです。

 

家賃を払わない人に対しては、その勤務先から払ってもらえる
どんなに督促しても家賃を支払ってこない場合は、「給料の差押え」という方法があります。差押えとは、つまり給料が勤務先から賃借人に支払われる前に、そこから家賃分を強制的に差し引いて勤務先から直接こちらに滞納家賃を振り込んでもらうという方法です。

 

本人の意思に関わらず給料から差し引くことができるため、確実に家賃を回収することができます。

 

どうすれば給料を差押えできるか
差押えとは非常に強い権力ですので、差押えるためには「債務名義」が必ず必要となります。債務名義とはすなわち、裁判によって家賃滞納を訴えて得た、裁判所からの確定判決もしくは和解調書などのことを言います。そのため、差し押えるためには事前に訴訟を起こす必要があります。

 

その後、下記書類を裁判所に提出して申立てを行ないます。
1:債権差押命令申立書
2:債務名義(執行文の付与が必要)
3:送達証明書
4:資格証明書、滞納者の勤務先の会社謄本
5:住民票、戸籍の附票など

 

ちなみに、給料を差押えるためには、大前提として「滞納者の勤務先」が判明している必要があります。たとえ裁判で勝訴したとしても、裁判所が公権力によって滞納者の勤務先を調査してくれるわけではありません。そのため滞納者の勤務先が分からなければ、給料の差押えは不可能です。

 

だからこそ、入居するときに勤務先を申込書に記入してもらうのです。

 

家賃の全額を差押えできない場合がある
仮に差押えができたとしても、家賃の「全額」を一度に差押えできるとは限りません。実は給料の差押えには、債務者の生活を守るために一定の制限がかかっており、手取りの1/4までしか差押えることができません。そのため、例えば家賃6万円だとして給料が20万円であれば5万円までしか差押えができません。

 

あくまで差押えができないだけで、支払い義務は残りますのであとの1万円は自力で回収するしかありません。

 

未払い家賃の回収手段として給料の差押えは妥当か
給料の差押えは確実に未払い家賃を回収する手段ではありますが、実はさまざまなリスクがあります。

 

@滞納者が会社をクビになる可能性がある
給料を差押えると、滞納者の勤務先に裁判所から差押え命令書が届きます。普通の会社であれば、これが届いた時点でびっくりします。滅多に見るものではないからです。そこには、どの社員が、どんな理由で、誰から、いくら差押えされているのかがはっきりと書かれます。

 

つまり勤務先に家賃を滞納していることが完全にバレてしまうのです。これは社内的にも非常に印象が悪いですから、出世コースからはずされたり、場合によっては、社員を解雇する可能性もあります。もちろんそんな理由による解雇では不当解雇となる可能性もあるため、現実的には社員に自主退社をするよう会社から圧力をかけるでしょう。

 

万が一給料を差押さえたことによって滞納者が職を失えば、さらに滞納家賃の回収は困難になります。
ですので、給料の差押えは本当に「最終手段」と考えるのが良いでしょう。

 

A滞納家賃を回収している間に、更に滞納が発生する
仮に3ヶ月分滞納している状態で差押えをして、給料3ヶ月を差押えて全額回収したとしても、そのときには更に家賃滞納が発生している可能性があります。

 

家賃のように毎月債権が発生する場合は、たとえ給料を差押えたとしても、それだけでは根本的な解決にはならない可能性があるのです。

 

未払い家賃の回収よりも、建物明渡しが最優先
不動産投資において万が一家賃滞納に出くわしたら、未払い家賃の全額回収よりも、建物の明渡しを最優先に考えることが何より重要です。

 

家賃を払わない入居者がその部屋にいるだけで、新たな損失がどんどん生じてしまいますので、まずは建物明渡請求によって部屋を奪還し、その上で給料を差押さえるなどしてゆっくり滞納家賃を回収すれば良いのです。

 

何よりも部屋を明渡してもらうことを最優先に交渉し、そして空いた部屋に早く新たな入居者に住んでもらった方が、よほどメリットがあるのです。

 

給料の差押えは債権回収の手段としては非常に有効ですが、家賃滞納の場合は、問題の根本的な解決にはならないケースが多いため、まずは建物明渡しを優先的に考えるようにしましょう。

 

まとめ
・給料の差押は、実際に行うより、入居者へのプレッシャーと使う程度
・給料を差押するよりも、建物明渡しが優先

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