隣地を通っている下水管トラブルについて

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隣地を通っている下水管トラブル

人が住む上で電気、ガス、水道などのライフラインはなくてはならない存在です。電気は電線、ガスはガス管、水道は水道管を伝ってこれらのエネルギーを調達しますが、水道に限っては給水するだけではなく、使い終わった後の「排水」についても家を建てるにあたっては十分考慮する必要があります。

 

生活用水を下水道に排水するためには、通常、全面道路の下水道管や合流管などに流すことになります。

 

都市部などの平地で、区画がしっかりと整備されている地域の場合は、建物の前面にこのような下水道管が通っているため特段問題とはならないのですが、丘陵地など高低差がある斜面に建っている住宅の場合は、万が一下水管が住宅よりも高い位置を流れている場合、物理的に排水することが困難になります。

 

そのため、そのような場合は距離的には離れていたとしても、さらに低い位置を流れている下水道管に接続して排水することとなっています。これは法律によって認められている排水方法なのですが、そうなると排水管から下水道管までの長い距離を配管でつなぐことになり、この際、隣の敷地を通過しなければならなくなることがあり、これが原因で隣地トラブルが発生する場合があるのです。

 

そのため、下水管が隣地を通っている収益物件を購入するときは、トラブルが起きないかを事前に確認しておくことが必要です。

 

そもそも他人の敷地に配管を設置する権利はあるのか
確かに他人の敷地を勝手に使用することはできませんが、生活排水については隣地間においては下水管を隣の敷地に設置しなければならない状況は、当然に予想される事態でもあるはずです。

 

そこで民法では、排水のための低地の通水について、自家用や農業用、工業用などに使った水を排水するために、自分よりも低地にある土地に水を通過させることができる、と規定しています。

 

これを「余水排池権」と言います。また、この際は低地の所有者のために損害が最も少ないような場所と方法を選ばなければならないとも規定されています。つまり、低地に排水管を通しても良いが、どんな方法でも良いわけではなく、低地所有者に最も損害が少ない方法を選ばなければならないと言うことです。

 

これは民法だけではなく、下水道法にも同様の規定があり、相隣関係にある土地が低地、高地の関係にない場合においても、排水管の設置が必要な場合についてはこの規定が類推適用されるとしています。

 

トラブル例@購入した土地に隣地の排水管が埋設されていることを知らなかった
住宅を建築しようとする場合、まずは土地を購入しそこに家を建てることになります。この土地の購入の際に更地の状態しか確認せず購入し、その後建設業者が土地を細かく調査したところ、隣地の排水管がその土地に埋設され通過していることが判明し、その影響で建物の建築に支障をきたす、といった場合があります。

 

もちろんこのような事は、土地売買の際に不動産業者が重要事項説明において説明しなければならない内容となりますが、現実問題として既に購入してそこに住むことを前提に人生設計をしている人にとっては、なんとかしてその場所に自分の希望通りの家を建てたいと思うことでしょう。

 

ただ、先ほども解説した通り、隣地の所有者には「余水排池権」があるため、このような生活用水の排水管を撤去させることはできないのです。

 

そのため土地を購入する際には、目に見える部分だけではなく、地中に隣地の排水管が埋設されていないかについても、事前にしっかりと確認しておきましょう。

 

トラブル例A排水管設置とその方法に関する判断
高低差がないにしても、例えば袋地などの土地については、下水道管に排水を接続させるにあたって、ほぼ間違いなく隣地の敷地に配管を通す必要が出てきます。

 

このような高低差がない土地間における余水排池権についても、下水道法によると「他人の土地又は排水設備を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難であるとき」と規定していますが、この困難であるときとは、仮に他人の土地を使用する以外の排水方法があったとしても、その設置費用に多額の費用がかかるような場合についても含まれるのです。

 

このような場合、方法としては、新たに排水管を隣人の敷地に新設して設置する方法と、隣人がすでに設置している既設排水管に接続させる方法がありますが、このどちらの方法を選択するのかについて、隣人とトラブルになるケースがあります。

 

排水管の設置費用で考えると、既設排水管に接続する方がかなり費用は抑えられますが、隣人からしてみれば、他人の生活排水を既設排水管に接続されることで、次のようなリスクが生じる場合があります。

 

1:排水管が詰まりやすくなる
2:排水管が詰まった場合の修理工事が非常に大掛かりとなる恐れがある

 

これらの事情がある場合は、既設排水管への接続工事を拒否される場合があります。過去の事例でも、このような場合は多少設置費用がかかったとしても、隣人への影響に配慮して新設配管の設置をするようにとの判決が出たりしているようです。

 

このように排水管については「余水排池権」という権利はありますが、隣人とのトラブルをさけるためには、事前の協議がとても重要であると言えるでしょう。

 

トラブルB排水管トラブルで隣地の許可が必要だが許可が下りない
収益物件を購入した後に、よくあることですが、建物から隣地を通って下水管につないでいるケースでは、下水管につまりが発生した場合などで工事が発生すると、隣地に入って工事が必要になります。

 

しかし、隣地の所有者と仲が良ければよいのですが、アパート経営に良い思いをしていない方や以前トラブルがあったりすると、工事を行う許可を出してくれないケースが多々あります。

 

こうなると、住民の下水菅が詰まったままになると生活できなくなります。そのため、退去が続出して、経営が破たんしかねない事態もあり得るのです。

 

裁判等を起こせば、工事を行う許可を出すことは可能であったとしても、緊急を要する下水管トラブルにすぐに工事ができないのは、致命的です。ほとんどの方が、注意していないポイントですが、下水管が他人敷地を通っている場合は、かなり注意して購入することをお勧めしています。

 

まとめ
・下水管が他人敷地を通らざるを得ないケースや既に他人敷地を通っているケースがあり、トラブルになりやすい
・隣人との協定など、トラブルが起きないようになっているかは購入前に入念に確認すべき

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