瑕疵担保とは何か
不動産投資をしていると、売買図面に、「瑕疵担保免責」という言葉が出てくることがあります。例えば、「瑕疵担保責任は免除」といった感じです。慣れるとたいしたことはないのですが、売主は、建物に不具合があっても知りませんよ、建物が大丈夫かどうかは、あなた自身が判断してね、ということです。
不動産投資の世界では、仲介業者は、そんなの当たり前だ、と言われることも多いですが、初心者の方は、不動産投資を始めるにあたって、こういったよくわからない用語を発見した場合は、絶対にスルーしてはいけません。
瑕疵担保責任と不動産売買時によくある瑕疵担保免責について解説します。
瑕疵担保責任とは
瑕疵担保責任という言葉には「瑕疵」「担保」「責任」という3つの意味が含まれています。まず瑕疵とは、簡単に言うと「欠陥」のことです。よく欠陥住宅なんて言いますよね。不動産の場合の瑕疵とは、通常有すべき性能が欠けていて、生活に支障があるような欠陥のことを言います。
そもそも欠陥住宅と最初から分かっていればだれも買いません。ですから、ここで言う瑕疵とは不動産の引き渡しの際には気がつかなかった「隠れた瑕疵」のことを言います。
瑕疵として認められるのは、「構造耐力上 主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」とは建物の基礎、柱、梁、壁、屋根などが該当してきます。それ以外の部分(内装等)は隠れていないので、自分でチェックしないといけません。
なかなか「構造耐力上 主要な部分」で欠陥が発生することは少なく、たいていの場合は「雨水の浸入を防止する部分」です。築古投資では、雨漏りとかシロアリなんて良く聞きます。
次に担保とは、平たく言うと、もしものことがあった場合の保証のことだと捉えてください。つまり、瑕疵担保と言えば、「不動産に隠れた欠陥があった場合の保証」というような意味です。
最後に責任とは、その言葉の通り「責任をとる」ということですから、最後にまとめると、瑕疵担保責任とは、「不動産に隠れた欠陥があった場合の保証をする責任」という意味になるのです。ちなみに、だれがこの責任を負っているのかというと、ズバリ不動産の「売主」です。
「売主の瑕疵担保責任を免除する」とは
瑕疵担保責任の意味が理解できたところで、いよいよ本題です。資用不動産の募集図面や、売買契約の際の重要事項説明書および契約書の特約事項などに「売主の瑕疵担保責任を免除する」との一文が盛り込まれているケースがあります。
要するに先ほど説明した「売主の瑕疵を担保する責任を免除しますよ」という意味です。まだピンと来ない方のために、さらに平たく言うと、「売った不動産にあとから何かあっても、売った人はそれを保証する責任を負いませんよ」という意味です。
家電製品で言えば、「この商品には保証書はつきませんよ」と言っているのと同じことです。実は、中古の投資物件で個人売主の場合は、ほとんどの売買契約においてこの瑕疵担保責任を免除する一文が盛り込まれているのです。
ですから、この一文のある不動産を購入する際には、事前に不動産を細かくチェックしておかなければならないのです。とはいえ、収益不動産の流通の現場では、良い物件は1日で売れてしまうほど加熱しているので、建物をチェックなどなかなかできないのが現実です。
つまり、瑕疵担保免責の物件では、建物のリスクを背負って投資を始めるということを頭できちんと理解しておきましょう。そして、建物のリスクをある程度カバーしてくれるのが、火災保険なのです。瑕疵担保免責の物件で火災保険に入らないということはあり得ないことです。
瑕疵担保責任の期間とは
では、瑕疵担保責任を免除しない契約の場合、売主はいつまでこの責任を負い続けるのでしょうか。これは売買契約の条件として売主と買主双方の話し合いで任意に設定することができますが、売主が個人の場合は1?3ヶ月程度とするのが一般的です。
ただし、これはあくまで個人が売主の場合であり、売主が不動産会社などの宅建業者になると「宅建業法」と「品確法」という2つの法律の制限を受けることになります。
宅建業者が売主となる場合については、不動産の専門知識が少ない買主側に不利になる恐れがあるため、買主保護の考え方により、瑕疵担保責任については買主にとって不利となる条項を設定することができません。
そのため瑕疵担保責任期間についても、個人売主の時のように免除したり1?3ヶ月程度の短い期間に制限することができず、宅建業法上は「物件の引き渡し時から2年以上」という制限が設けられています。そのため、投資用不動産を売買している中小企業の不動産会社の売買契約書のほとんどは、この瑕疵担保責任期間を最短の「2年間」としているのが通常です。
さらにもう一つ、不動産業者が新築物件を売主として売買した場合については、さらに厳しい制限が「品確法」(住宅の品質確保の促進等に関する法律)によって規定されています。
この法律によると、建物の「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」については、2年目以降に発覚することが多いため、この部分に関する瑕疵担保責任については「引き渡しから10年間」負わなければならないこととなっています。
裁判になるケースもある
どこまでが「構造耐力上 主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」に当てはまるのかという明確な線引きが難しいため、きわどい場所に欠陥が発覚した場合にその瑕疵担保期間を宅建業法上の2年が適用されるのか、それとも品確法の10年が適用されるのかで、宅建業者と買主との間で争いとなり、酷い場合で裁判にまでなることもあります。
そのため、新築物件に不動産投資する場合は、まずは、2年以内に、欠陥を見つけるようにチェックすることが必要になります。
まとめ
・瑕疵とは、不動産取引ではよくあることであり、瑕疵担保免責に場合は、リスクが買主にあることを理解する
・新築物件は、品確法では10年であるが、まずは2年以内に建物をよくチェックすること
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