賃貸経営での高齢者との賃貸借契約について

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高齢者との賃貸借契約のポイント

昨今の日本は高齢化の一途を辿っており、近い将来には4人に1人が75歳以上という超高齢社会が到来する見込みとなっています。一昔前までの賃貸経営者は、何かとリスクが大きい「高齢者」に対して自身の所有する不動産を賃貸することを敬遠する傾向にありましたが、今後は人口減少も相まって、これら高齢者に対しても積極的に部屋を貸さなければならなくなるでしょう。

 

では、高齢者と賃貸借契約を結ぶ際には、賃貸経営者としてどのような点に注意して契約をすれば良いのでしょうか。

 

高齢者だからこそのリスクとは
そもそもなぜ高齢者に部屋を貸すことが、リスクが高いとされているのでしょうか。まずはその理由から解説したいと思います。

 

@設備上のリスク
高齢者が一人で生活するということは、想像以上に大変なことです。場合によっては室内のバリアフリー化も考えなければなりません。基本的に大家側に室内を改装してあげる義務はありませんが、もしも一度部屋を貸すと現実問題としては入居中に手すりの設置などを相談される可能性もあります。

 

3点ユニットの部屋に、高齢者から入居したいといわれると、3点ユニットのバスを超えられずけがをしたら、といったリスクがあるため、入居させにくい要因になっています。

 

A安全上のリスク
万が一お風呂場で転んで転倒した場合、家族が同居していれば問題ありませんが、高齢者の一人暮らしとなると非常に危険です。発見が遅れれば命の危険すらあるのです。

 

B認知症リスク
高齢者が入居中に認知症にかかってしまった場合は非常に厄介な状況になります。他の入居者などに迷惑をかけた場合は、大家に直接的な責任はなくとも、管理者として毎回対処しなければならないため非常に大変です。

 

C死亡リスク
高齢者の賃貸には常に「死亡リスク」がつきまといます。悲しい話ですが、高齢者の一人暮らしの場合、室内において万が一のことがあった場合に、発見が遅れ腐乱してしまうことも少なくありません。そうなると賃貸物件が被る経済的ダメージがとても大きくなります。

 

 

このように高齢者に対して賃貸するということは、通常の賃貸リスク以外に非常に重いリスクを負うこととなります。そのため、高齢者と賃貸借契約を結ぶ際には、契約に先立ち次のような点を契約書の条項などに盛り込むと良いでしょう。

 

高齢者との契約において取り入れたい条項
高齢者との契約の際には、下記のような事項を入れておいた方がいいでしょう。

 

@部屋を○日以上あける場合は事前に貸主に必ず連絡すること
一人暮らしの高齢者のリスクを軽減させるためには、貸主が早く異変に気がつく必要があります。そこで、3日以上部屋をあけて旅行などにいく際や、病院に入院する際などについては、必ず事前に連絡してもらうことで、万が一連日部屋の明かりが消えていても、室内で倒れていると疑わずに済むのです。

 

A賃借人と○日以上電話連絡がつかない場合は、警察立会いのもと室内の安全確認を実施する事に予め同意する
これは、とても重要です。上記の@の条項と併用して使用します。高齢者に部屋を賃貸する場合は、賃貸経営者として室内で万が一のことがあった場合に、できる限り早く発見することが非常に重要となります。そこで、電話連絡がつかない場合は、もしものことを考えて警察を伴ってカギを開けて入りますよ、ということを契約書の条項に盛り込みます。

 

一見すると強引な条項に聞こえるかもしれませんが、これは高齢者自身のためにもなることなので、きちんと説明すればほとんどの高齢者は理解してくれます。

 

B認知症など一定の病気と診断された場合は、賃貸借契約を解除する
賃貸経営者として認知症患者や長期入院が必要と診断された患者に対して、いつまでも部屋を貸し続けることはできません。そのため、上記のような条項を入れておかざるを得ません。

 

ただ、これだけでは高齢者が行き場をなくしてしまい、事実上行使することが難しいため、予め連帯保証人の他に「身元引き受け人」や「身元保証人」などを立ててもらい、その方に万が一の際には高齢者を引き取ってもらうよう予め別途合意書や承諾書などを作成して交わしておくと良いでしょう。例えば高齢者の子供や孫などの若い世代が良いでしょう。

 

C賃借人に長期入院が必要となり退院の目処がたたない場合は、自ら賃貸借契約を解除しなければならない。この際、室内にある一切の動産を連帯保証人○○が入院の日から1ヶ月以内に引き取り賃貸人に部屋を明け渡すものとする。

 

賃借人が長期入院するような場合は、室内の管理者がいなくなるため部屋の痛みが激しくなったり、場合によっては泥棒が入ったりするなど何かと問題が発生します。そのため高齢者が長期入院する場合は、それに伴って賃貸借契約を自ら解除するよう予め条項を設定しておきましょう。

 

重要なことは、事前に家族を交えてしっかり説明すること
これらの条項は、万が一裁判沙汰にまでなった場合にも確実に執行できるとは限りません。事実、借地借家法では賃借人にとって一方的に不利な条項は無効となるため、これらの条項が裁判上どこまで認められるかははっきりとは断定できません。

 

そのためこれらの追加条項を盛り込む場合は、予め高齢者の家族も交えてこれらの条項の意味をしっかり理解してもらい、任意で守ることを前提に入居してもらうことが何より重要となります。

 

まとめ
・これから最も伸びる市場は高齢者市場。そのためまったく入居させないのはもったいない
・そのため、高齢者入居のリスクを回避できる契約書を作成すること

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