不動産売買時の樹木などの越境トラブルについて

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樹木などの越境トラブル

アメリカや中国など国土の広い国とは違い、日本の特に都市部などは住宅が密集しているため、隣の建物との物理的な距離が非常に近く、ちょっとしたことで相手の敷地との境界線を越えてしまうケースがあります。これを「越境トラブル」といい、主に次のようなケースがあります。

 

樹木の越境トラブルについて
庭付きの一戸建てや、敷地が広い賃貸物件などの場合は、その敷地内に樹木が植わっていることがあります。もちろん自分の敷地ですから、樹木を植えること自体には何ら問題はありません。

 

ただ、樹木は成長してくるとどんどん大きくなり、気がつけば隣との境界線を越えてしまっている、なんてこともあります。このように樹木が境界線を越えている場合、法律的にはどのように対処すれば良いのでしょうか。

 

実は民法によれば、樹木のどの部分が境界線を越えているのかによって、その対処法に違いが生じることになるのです。

 

@樹木の「枝」が境界線を越えている場合
隣の家の庭から立派な木の枝が伸びていて、それが自分の家の庭にまで進入してきたら困りますよね。特に秋になると大量の落ち葉が散ってきたり、場合によっては自分の敷地内に止めている車に接触することだってあり得るかもしれません。

 

このように樹木の「枝」が越境している場合は、民法によって以下のように規定されています。

 

 【民法233条1項】
 隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

 

つまり、この場合は樹木の所有者であるお隣さんに越境している部分の枝を切り取らせることができるのです。裏を返せば、あなたが勝手に枝を切り取ることはできないのです。なぜなら、樹木の「枝」は隣地の所有者のもの、という扱いだからです。

 

A樹木の「根」が境界線を越えている場合
植物によっては樹齢が経過するとその根っこは土の中でどんどん成長し、人の目に見えないところで既に敷地の境界線を越えている可能性もあります。では、この場合も枝と同じようにお隣さんに切らせることができるのかというと、実はちょっと違います。

 

 【民法233条2項】
 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

 

このようにどこにも「切り取らせることができる」とは書いてありません。実は、隣の樹木の根っこがこっちの敷地に生えてきたら、越えている部分の根っこを勝手に切っても問題ないのです。

 

これは、枝の所有権が隣人にあると扱うのに対し、根っこの所有権はこちらにあると扱われるからなのです。

 

法律ではこのように規定されていますが、現実問題としては勝手に根っこを切って万が一隣の家の樹木が枯れたりするとトラブルになる恐れがあります。

 

そのため、すぐに根っこを切除しなければ、こちらの建物の基礎に大きな影響を及ぼすような緊急性がないのであれば、隣人に一言伝えてから切った方が、トラブルを未然に防げるでしょう。

 

看板に関するトラブルについて
中古の収益不動産を購入する際にはもよくあるのが、看板等の越境です。私の所有物件の中にも物件名を表す看板がわずかですが、隣地に越境している物件を購入しています。この時は、隣地の人に建て替える際には、看板の越境を修正するという約束事をして解決することで引渡しを受けましたが、このような例はいくらでもあります。

 

特に、自分の建物や敷地内に看板を設置する際には、常に隣とのトラブルに注意する必要があります。例えば飲食店などであれば、建物の外壁に袖看板を設置することがあると思いますが、これが原因でトラブルとなるケースもあります。

 

@袖看板の設置面が隣地と隣接している場合
この場合には、袖看板を自身の敷地内におさまるように設置しなければなりません。例えば袖看板を設置したときには隣の敷地が更地で特段なにも言われなかったとしても、隣地の所有者がこれに気がついて注意してきた場合は看板を撤去するか、自身の敷地内におさまるように改修しなければなりません。

 

そのため、袖看板を設置する際には、敷地の境界線よりも内側におさまるように設置しましょう。

 

A袖看板の設置面が道路に隣接している場合
道路に看板や日よけを出す場合は、事前に道路使用許可が必要となります。看板の種類に応じて許可基準があるため、詳しくは各自治体に確認しましょう。

 

まとめ
・樹木・看板などの越境はよくあること
・トラブルを避けるために、購入時点で解決するようにきちんと仲介業者に動いてもらうこと
・保有してから、看板等が越境しないように、店子にも注意させること

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