仮登記されている土地・建物の注意点
収益不動産を購入する際には、事前にその権利関係をしっかりとチェックすることがとても重要です。そして権利関係をチェックするためには不動産の「登記」を確認する必要があります。一般的な不動産であれば、売主名義の「所有権」や、売主がローンを組んでいる銀行が設定した「抵当権」が登記されていますが、稀に「仮登記」というものが登記されている場合があります。
中古の収益不動産の場合に仮登記というのは、ほとんど出てきませんが、土地の売買には見かけることもあるでしょう。この仮登記、名前こそ仮となっていますが、実は非常に重要な意味のある登記なのです。仮登記の意味を知らずにその不動産を購入すると、取り返しのつかないことになる可能性がありますので、ここで良く確認しておきましょう。
仮登記とは
仮登記とは本登記をするために必要な要件が揃っていない場合に、将来本登記をすることを前提に予めその順位を確保するためにする登記のことを言います。もう少し平たく言うと、登記順位を予約して押さえるための登記のことです。
ですから、仮登記をしたあとに別の登記がされたとしても、後日仮登記に基づいて本登記をすれば、仮登記以降の行為は覆されることになるのです。仮登記自体には具体的な対抗力はありませんが、仮登記はいつ本登記をされるか分からないため、常に本登記されることのリスクを考えておく必要があるのです。
不動産を購入する際に、警戒すべき2種類の仮登記
仮登記はその性質を大きく2種類に分類することができ、不動産を購入する際には、この双方に対して注意が必要となります。
@物権保全の仮登記
売買によって不動産を取得したが、その際に権利証などを紛失してしまい今すぐ所有権移転登記ができない場合に、とりあえず登記順位を予約するためにする仮登記のことを言います。
物権保全とはこの場合不動産に対する「所有権」という権利を、仮登記によってその順位を予約し保全することを意味します。このケースは、不動産を売買したことなどによって、すでに「権利変動」が起きていることが前提となります。
A:請求権保全の仮登記
これに対し請求権の保全とは、未だ権利変動が起きていない状況下において、将来の債務を担保するためにする仮登記や、将来一定の条件が揃えば権利変動をする予定があるが、今はまだ条件が満たされていないためすぐに所有権を移転できないような場合にする仮登記を言います。権利変動はまだ起きていないため、あくまで「請求権」を保全することになります。
なぜ仮登記は危ないのか
先ほども説明した通り、仮登記とは登記の「順位」を予約する登記です。仮に所有権移転仮登記がある不動産を購入し、あなたが自分の名前を所有者として登記したとします。そしてその後仮登記に基づいた所有権移転の本登記がされると、あなたの順位よりも前の順位を予約していた仮登記に基づく本登記が優先するため、あなたへの所有権移転は否定されることになってしまうのです。
つまり、仮登記があるということはその内容によっては、後からした登記の効力が否定され、登記官の職権によって「抹消」されてしまうという大変大きなリスクがあるということなのです。
どうしても仮登記物件を購入したい場合は
このように仮登記がある物件は非常に高いリスクがあります。そのため、仮登記の内容によっては、購入自体を避けるという選択肢が一番有効ですが、中には抵当権の抹消と一緒に容易に抹消できる仮登記もあります。
例えば、比較的古い投資物件の場合「条件付賃借権設定仮登記」という仮登記がされていることがありますが、これはその物件を購入する当初に融資をした金融機関が抵当権と一緒に仮登記していたものです。
当時、抵当権の実行によって不動産を競売する際に、これを阻止するために居座り屋に不動産を占有させるといった事案が多発したため、これを防止する目的で金融機関が条件付賃借権設定仮登記をしていました。
この仮登記は、売主がローンの残債務を一括返済すれば抵当権とともに抹消してもらうことができますので、さほど気にする必要はありません。
このように、仮登記の中には不動産の売買にあたって事前に抹消できるものもありますので、詳しくは売主側に確認すると良いでしょう。
まとめ
・あまり見かけない仮登記ですが、仮登記がある場合には、抹消できるかがポイント
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