不賃貸経営で孤独死が発生した場合について

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孤独死の場合の手続き

不動産投資において最もオーソドックスな間取りはやはりワンルームです。そのため賃貸経営については基本的に「単身者」つまり一人暮らしが多くなります。そんな中、昨今徐々に問題視され始めている問題が一人暮らしの「孤独死」です。

 

私自身の賃貸経営でも発生していますが、孤独死の件数は、大幅な増加傾向にあります。厚生労働省の「人口動態統計」と総務省の「人口推計年報」によると、人口100万人あたりの孤独死の出現率は、1999年以降右肩上がりで急上昇しています。

 

特に孤独死の発生率が高いのが東京で、今世紀に入ってから孤独死の件数がなんと5倍にまで増えているそうです。孤独死と聞くと、どこか他人事のような感じがするかもしれませんが、アパートやマンションなど、比較的多い戸数で賃貸経営をしている場合は、いつ孤独死に遭遇してももはやおかしくはない時代なのです。

 

そこで今回は、万が一自身の賃貸物件で孤独死が発生した場合、どのような手続きが必要になるのかについて詳しく解説したいと思います。

 

孤独死が発覚する主な「きっかけ」とは
一人暮らしの場合は、万が一部屋の中にいるときに心臓発作などで急に倒れてしまうと、周りに気がつく人がいないため、その発見が遅れてしまいます。では孤独死はどのような経緯で発覚することが多いのでしょうか。

 

@家賃滞納が発生したため何度も携帯電話に連絡したが全く電話に出ない
賃貸経営者が賃借人に対して日常的に電話することはほとんどありませんが、唯一あるとすると家賃を滞納したときの督促電話です。よくあるケースとしては、月末になっても家賃の振込がなく、督促をしても連絡がつかないため現地まで行ってみたところ、そこで初めて異変に気がつくということがあります。

 

A家族や友人が本人に電話をしても数日間全く電話に出ない
家族や友人から本人と連絡がとれないため、安否確認のために部屋に入りたいから合鍵を貸してほしい、といった電話が賃貸経営者のもとに入ることがあります。

 

B隣の部屋の住人から異臭がするとの苦情が入る。
人が死亡して数日経つと死体が腐乱してしまい、酷い異臭を発することがあります。この場合、隣の住人から異臭がするとの苦情が、賃貸経営者のもとに入ることになります。

 

概ね賃貸物件において孤独死が発覚するケースというのはこれらのいずれかです。孤独死の場合は、近くに家族がいないため、死亡から発見までに時間を要してしまうという特徴があり、これによってさまざまな問題が発生するのです。

 

孤独死発生からの主なスキーム

 

ステップ1:警察へ通報
孤独死が疑われる場合は、すぐに警察へ通報してください。緊急を要する場合は110番、そうでない場合は物件所在地を管轄する警察署へ連絡すると、最寄りの交番からおまわりさんが来てくれます。

 

できれば本人の家族などにも立ち会ってもらい、部屋のカギを解錠してください。この手順をとらないと、後から警察に事情を説明するのが非常に大変ですので、必ず部屋に踏み込む時は事前に警察を呼びましょう。

 

ステップ2:現場検証
万が一現場で孤独死していた場合は、警察がその場で現場検証を行ないます。場合によっては応援の警察も駆けつけます。パトカーで乗り付けられることもあるため、近隣住民が心配しないようしっかりと対応しましょう。

 

ある管理会社は、慣れているため、通常のパトカーではなく、警察車両とわからないグレーのバンで来るように依頼をかけている会社もあります。警察車両だと、近隣住民が騒ぎ立てるため、あとの賃貸付けに苦労することになります。

 

死因が特定できない場合は、そのまま死体は警察署の霊安室などに運ばれ、死因特定のための死体検案が行なわれます。

 

ステップ3:室内の状況確認
死因が特定できるまでは、ある程度現場を保存しておく必要があるため、この段階ではまだ勝手に片付けたりすることはできません。遺族の連絡先をしっかりと聞いた上で、翌日くらいに部屋の明渡しや解約について話すと良いでしょう。

 

ステップ4:明渡しに向けた手続き
あまり理解されていない方がいますが、賃貸借契約は、契約者本人が死亡しただけでは当然には終了しません。部屋を借りる権利は、相続人に継承されるため、相続人が解除しなければ契約自体は存続し続けます。そのため賃貸経営者としては、以下の点について必ず確認しておきましょう。

 

1:賃借人の法定相続人は誰なのか
2:今後の連絡の窓口はどこになるのか
3:いつまでに部屋を明け渡すのか

 

孤独死が発生した場合は、相続人が賃貸借契約を存続させることはないため、通常はそのまま解約の手続きに以降します。必ず賃貸借契約解約申入書を相続人に記入してもらいましょう。

 

原状回復費用についても、相続人であるご家族に負担してもらうことになります。万が一相続人が相続放棄をすることも考えて、必ず連帯保証人にも連絡をとっておきましょう。
 
ステッップ5:家賃値下がりに対する保証
孤独死で状況が酷い場合は、いわゆる「いわくつき物件」となってしまうため、通常よりも低い家賃で貸すことになり、賃貸経営者としては損害を被ることになります。

 

これについては過去の判例などに鑑みると、自殺の場合と比べ孤独死の場合は避けられない部分もあるため、原状回復費用の負担は認めるものの、逸失利益の損害賠償に対しては否定的な見解です。

 

まとめ
・孤独死は、賃貸経営にとって身近な問題
・孤独死が、発生したらあわてず、警察や管理会社と連携し、近隣住民に悟られないように処理すべき
・孤独死で、損害賠償責任は遺族に対して請求できないので、家賃下落リスクは大家が負担することになる

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