建ぺいや容積率が契約と違う場合解除できるか
不動産は、投資目的で購入するにしても、マイホーム目的で購入するにしても、非常に高額な取引であることには変わりがありません。だからこそ、購入にあたっては、細心の注意をもって契約しなければなりません。
では、万が一あなたが購入した物件の建ぺい率や容積率が契約時の説明と違っていて違法建築物だった場合、あなたは売買契約を解除することができるのでしょうか。
建ぺい率と容積率とは
建物を建築する際には、建ぺい率と容積率という2つの数値がとても重要になります。実はこの2つの数値はその土地の価格にも大きな影響を与える事になるのです。
【建ぺい率】
建築物の建築面積の敷地面積に対する割合を言います。建築基準法では用途地域に応じて建ぺい率が決まっています。ちなみに建築面積とは、簡単に言うと建物を上空から見た場合の水平投影面積のことです。
この制限がないと、人がみな自分の土地だからと言って、敷地いっぱいに建物を建ててしまうと、安全上や環境面などあらゆる面において不具合が生じるため設定されています。
【容積率】
敷地面積に対する延床面積の割合を言います。仮に200uの敷地に対して1階部分が150u、2階部分が50uの建物があると仮定するとその容積率は100%となります。
例えば同じ100uの土地だとしても、建ぺい率や容積率の制限が低い場合は、技術的には建築可能であっても、法的には建物の大きさを制限されてしまうことがあるということなのです。
不動産売買における説明義務について
例えば不動産投資の目的で中古マンションを購入するとします。この際、中古マンションの売買契約に先立ち、仲介に入っている不動産業者は、当該物件の建ぺい率や容積率について事前に買主に対して説明しなければなりません。
これを「重要事項説明」といい、それが書かれた説明書きを「重要事項説明書」と言います。では、万が一重要事項説明書に記載のある建ぺい率や容積率が、実際の建ぺい率や容積率と相違していたことが契約後になって発覚した場合、買主はそれを理由に契約を解除することができるのでしょうか。
説明義務と損害賠償
このようなケースにおいては、実際法的にどうなるかはケースによって変わってくる可能性があることに留意していただきたいと思います。その上で見解を述べるとするならば、建物引き渡しまでの間に何らかの形でその相違が発覚した場合は、売買契約を解除できる可能性はあるでしょう。
但し、仮に重要事項説明の内容と相違していたとしても、当該建物が修正後の建ぺい率や容積率にも適合しているような場合は、違法建築物ではないため契約の解除事由としては弱い可能性があります。
もしも修正後の建ぺい率や容積率を当てはめたときに、当該建物がそれを満たすことができない場合は違法建築物となりますので、解除事由としてはある程度説得力があると言えます。
ただ、場合によっては売買の決済引き渡しが終わった後に、これらの事実が発覚するようなケースもあります。そうなると契約の解除というよりは、売主や不動産業者に対しての損害賠償請求の話になってきます。このようなケースは過去の判例を紐解くと複数例ありますが、必ずしも損害賠償請求が認められるとは限らないようです。
例えば、「東京地裁平成24年12月21日判決」の判例によると、マンションの容積率が基準を超過していることが引き渡し後に発覚した事案において、買主らが瑕疵担保責任、不法行為、債務不履行などを理由に価値の低下による損害賠償を売主および不動産業者に求めましたが、当該事項の説明義務違反があったことは認められたものの、それによる事実上の損害がないとして請求が棄却されました。
つまり、この判例をもとに考えると、建ぺい率や容積率は不動産業者にその説明義務があることは確かですが、だからと言って直ちに損害賠償請求が認められるというわけではなく、それによって具体的な損害が発生しているなどの事情が必要であるといえるでしょう。
まとめ
・契約後に違法物件だとわかった場合、引渡し前であれば、契約解除できる可能性は高いが、引渡し後に売主に損害を請求するのは、大変かつ損害が認められないケースがあることを頭に入れて投資すべき
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