高齢の不動産オーナーは、認知症対策が必須

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家族信託を活用する上でのポイント

高齢の賃貸経営者から相談を受けていままで家族信託を行うことを推奨していきていますが、家族信託がうまくいくかどうかには、あるポイントがあります。そこで今回は、賃貸経営者が家族信託を利用するにあたって、事前に押さえておくべきポイントについて解説してみたいと思います。

 

家族が納得できる信託にする
相続対策も同じですが、家族の納得が得られるかが成功の最大のポイントなります。

 

信託契約は、本人の希望通りに財産を信託し管理する方法を予め指定できるところが大きなメリットですが、だからと言ってすべて本人の好き勝手に信託の仕組みをつくってしまっては、家族からの同意が得られないばかりか、かえってトラブルを誘発してしまう恐れもあります。

 

特に、自分自身の死後の法定相続人予定者が複数いる場合については、それら全員の利益均衡を予め考慮した家族信託を設計する必要があります。

 

例えば、長男を受託者として信託設計し、最終的な信託終了時点において、信託していたアパートを長男に帰属させるのであれば、その分次男には別のアパートを信託したり、または別途現金や不動産を準備してそれを遺言書によって次男に相続させるなどの配慮が必要となります。

 

このように、賃貸物件という非常に財産価値の高いものを信託する場合は、予め残りの家族の利益バランスも考慮した信託設計をするよう心がけましょう。

 

受託者の監督機能
家族信託は家族を信頼できるからこそ可能な財産管理方法ですが、それだけでは家族信託の正常な実施を完全に担保できるとは言い切れません。信頼して任せているからこそ、ちょっとでも報告が遅れたり、腑に落ちない点などが出てくると、とたんに疑心暗鬼になってしまったり、そのせいでせっかくの良好な家族関係がぎくしゃくしてしまう恐れもあります。

 

そのため、家族信託を利用して賃貸物件を信託する場合は、信託契約の際に「信託監督人」に関する定めを予め盛り込むことをおすすめします。これは委託者や受益者のためだけではなく、信託を任される受託者のためでもあります。

 

信託監督人をおくことで、委託者や受益者はより安心することができますし、何よりも家族を疑う必要がなくなります。ここが重要です。

 

また受託者にとっても、信託監督人の監督機能が働くことによって、より正しい信託行為が可能となると同時に、妙な疑いを委託者や受益者からかけられることもなくなります。

 

このように、信託監督人を定めるということは、受託者を信用できる、できない、とった問題ではなく、今後の家族関係を良好なまま維持していくための一つの「予備的対策」として実施する必要があるのです。

 

なお、信託監督人は家族内で指定しても構いませんが、できれば弁護士や司法書士など外部の専門家に依頼するとより適切なチェック機能が働くでしょう。

 

予備的受託者の設定
家族信託は受託者に対する信頼関係で成り立っている仕組みのため、仮に信託中に受託者が死亡した場合は、そこで受託者の業務は終了し、受託者という地位は受託者の法定相続人には承継されません。

 

そのため、賃貸物件を信託している場合は、万が一受託者が死亡してしまうと、そこで管理や運営がストップしてしまう恐れがあります。

 

また、死亡以外にも受託者が次のような状況に陥った場合は信託が終了してしまいます。

 

1:受託者が破産手続開始の決定を受けた時
2:受託者が成年被後見人又は被保佐人になった時
3:法人が受託者の場合で、合併以外の理由によって解散した時
4:受託者が自ら辞任したり解任された場合

 

そのため、賃貸物件を信託契約するときは、事前に受託者にもしものことがあった際の予備として「二次受託者」を予め設定しておくことをおすすめします。

 

なお、万が一二次受託者の定めが無い場合は、委託者と受益者の合意によって、また委託者がいない場合は受益者が単独で新たな受託者を選任することが可能です。

 

成年後見制度との併用
意外と思われるかもしれませんが、成年後見制度との併用は効果があります。家族信託はあくまで信託財産の管理運用が目的であり、認知症などによって判断能力が不十分となった本人自体の包括的な保護まではカバーできません。

 

例えば賃貸物件を信託しておけば、賃貸運営自体に支障はありませんが、それ以外の介護施設への入所契約などの身上監護については、別途家庭裁判所に対して成年後見の申立てを行う必要があります。

 

このように、財産管理と本人の身上監護は分けて考えて、家族信託と成年後見制度を上手に併用することが、よりその効果を高めることとなるでしょう。

 

信託の期間を必要以上に長くしない
信託のメリットは、遺言書とは違い、二次相続以降の受益権の移転先まで予め設定できることにありますが、あまりにも先のことまで設定してしまうと、現実の流れとのギャップが生まれる可能性もあるためあまりお勧めできません。

 

特に賃貸物件などの不動産の場合は、近隣地域の開発などの影響を受ける可能性もあるため、あまり先のことまで決めると、将来的に不都合が生じる恐れがあります。

 

信託期間は30年先まで設定が可能ですが、事実上はそこまで先の未来を現段階で指定することはただ選択肢の幅を狭めてしまうだけですので、長くても二次相続までの設定にとどめ、後はその時点で信託を終了させる方が良いでしょう。

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