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信託不動産の売買の方法

賃貸物件などを、契約信託を利用して家族に信託することを想定した場合において、当該信託物件を売却するにはどのような方法があるのでしょうか。今回はその中でも考えられる3つのケースを想定して解説してみたいと思います。

 

高齢の父親Xが委託者兼受益者となって、長男Yを受託者に指定し、賃貸アパートを信託財産として家族信託すると仮定します。

 

@信託の目的に従って売買する
家族信託における受託者の管理運用方法は、事前に取り決めた信託契約の目的の範囲内において、受託者が行なうことになります。つまり、信託契約の内容に信託財産の「売買」についても含まれている場合は、信託の目的に従って受託者が信託不動産であるアパートを売却することができます。

 

この時の「売主」は受託者となります。そして、信託不動産の売却によって生じた「利益」は、信託契約に別段の定めがなければ、信託財産に組み込まれることになります。

 

なお、この際気になるのが税金の問題ですが、信託の目的にしたがって信託不動産を売却した場合、譲渡所得税は信託法上の所有者である受託者ではなく、信託不動産から利益を享受する「受益者」が納税する義務を負うこととなります。

 

A信託終了によって売却
信託契約の目的や内容に信託不動産の売買が含まれていない場合は、受託者の権限において信託不動産を売却することができません。

 

そのため、信託期間中については、賃貸アパートの管理運営を継続しなければなりません。そして、父親Xの死亡によって信託契約が終了した際に、最終的な信託不動産の帰属先として指定された人が、自らの意思で不動産を売却するという方法があります。

 

例えば「父親Xの死亡によって信託契約が終了し、信託不動産は長男Yに帰属する」との指定があれば、長男Yは家族信託の受託者としてではなく、賃貸アパートの所有者として当該不動産を売却することができます。

 

B受益権を売却する
第三の方法として、信託不動産それ自体の売却ではなく、受益権を売却するという方法もあります。

 

そもそも家族信託は、信託不動産自体は独立した存在として扱われるため、登記上の名義人となっている受託者が信託契約の内容に則って信託財産を売却したとしても、それによって得られる利益は受託者ではなく「受益者」が享受することになります。

 

ということは、信託不動産自体を売却するのではなく、受益者が持つ「受益権」という権利を売却すれば実質的には同じような状況が生まれることになります。

 

受益権の売却は、所得税法上信託不動産の売却と同じと解釈することができますので、この際の受益権の売却にも、信託不動産を売却したときと同様の譲渡所得税が「受益者」に対して課税されます。

 

譲渡所得税の計算における短期譲渡と長期譲渡
ここで気になるのが、短期譲渡所得と長期譲渡所得の判別方法です。通常であれば、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える土地や建物を売却した場合は長期譲渡所得となり、下記の税率で課税されます。

 

【長期譲渡所得の場合】
所得税:15%
住民税:5%

 

これに対し、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は、以下のように税金が割高になります。

 

【短期譲渡所得の場合】
所得税:30%
復興特別所得税:2.1%
住民税:9%

 

では、信託不動産を売却した場合の「所有期間」とはどのように考えるのでしょうか。例えば、委託者=受益者となる上記具体例のような自益信託の場合は、信託契約によって不動産の取得日が変わることはありませんので、実際にその不動産を取得した日で計算することができます。

 

それ以外の他益信託や自己信託などの場合は、若干複雑になりますので、詳しくは税理士または所轄税務署にご確認ください。

 

まとめ
・受益権売買のみなれない取引ですが、信託財産を受益権で売却することができます
・しかし、通常信託受益権で売買されることは稀で、実際には受益権を解除して売買することの方が多いです。それくらい受益権売買が、不動産投資家の一般流通市場ではないからです。

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