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家族信託の倒産隔離とは

家族信託を利用する上で別事業との倒産隔離ができるといわれます。賃貸経営以外に別の事業を行う人は、事前に収益不動産を家族信託を行うことで、別事業の倒産から隔離できます。ただ、家族信託したらからといって、その家族信託している収益不動産が破綻しても大丈夫という話とは違います。

 

まずは、収益不動産以外に新規に別事業を始める際がいわゆる倒産隔離といわれるスキームですのでこちらから見ていきます。

 

別の新規事業を始める場合
経営者となる本人の財産の中に、収益不動産があったとします。これから新規事業を始める時に、家族信託を使えば、その収益不動産は守る仕組みがあるということです。つまり、家族信託を利用することで、経営者本人の財産と信託財産を分別することができ、もしも経営者個人の財産が破産によって差し押えられたとしても、信託財産だけは保護することができるからです。

 

通常、会社が倒産したとしても法的には経営者である個人と会社である法人は別人格ですから、会社が倒産してもそれによって必ず経営者が破産するというわけではありません。しかし、現実問題として、中小企業の社長は、銀行などの金融機関から資金を借入する際に保証人となっていることがほとんどですから、実務上は会社の破産手続きと経営者である社長個人の自己破産は同時に行なうのが一般的です。

 

そのため、新規事業を立ち上げる際には、常に経営者個人の資産についてもそのリスク対策を考えておく必要があり、そしてその方法として家族信託を利用した「倒産隔離機能」が非常に有効なのです。

 

これが、家族信託を使った倒産隔離機能と呼ばれるものです。

 

新規事業立ち上げにおける倒産隔離機能のスキーム
父親が新規で会社を立ち上げるとします。この際父親には賃貸アパートという資産がありました。これを万が一の時のために倒産隔離すると想定します。まずは父親を委託者、長男を受託者として賃貸物件を信託します。

 

ここでポイントなのは「登記」です。倒産から信託財産を隔離するためには信託の基本でもある「分別管理」をする必要があります。すなわち、登記できるものについては信託登記を行い、信託を登録できる財産についてはその手続きを行う必要があります。

 

これによって信託財産であるアパートは、父親の会社が倒産して保証人である父親の財産が差押えにあったとしても、倒産隔離機能が働き、アパートについては信託に関係のない債権者については差押えすることができなくなるのです。

 

倒産隔離機能は受益権の所在に注意
このように家族信託を使えば、万が一のときにもアパートという資産を一般債権者から隔離することができますが、ここで一つ注意点があります。それは「受益者」です。先ほどの事例では、委託者を父親、受託者を長男と仮定しましたが、受益者については特に触れていませんでした。

 

実は、この受益者を委託者と同じ父親に指定してしまうと一つ問題が発生します。委託者=受益者といういわゆる自益信託の場合は、信託財産であるアパートについては一般債権者から隔離できますが、受益者が有する「受益権」については差し押えられることとなってしまいます。

 

要するに、アパート経営によって得られる家賃収入などを委託者である父親が受け取るという自益信託の場合は、その「家賃を受け取る権利」を一般債権者に差し押えられてしまうということなのです。

 

ですから、家族信託の倒産隔離機能をしっかりと機能させるためには、この受益権を持つ受益者について、経営者である父親以外の人間に指定しておく必要があるのです。

 

受託者が破産しても大丈夫なのか
このように家族信託を利用して信託財産を委託者の破産から隔離するとちょっと気になるのが、万が一信託財産を託していた「受託者」が破産したらどうなるのかという問題です。実はこの場合についても信託財産は保護されます。

 

信託財産自体は「受託者」に帰属するのは間違いないのですが、あくまで受託者本人の固有財産からは「独立した財産」として扱われるため、万が一受託者側が破産したとしても、信託財産が差し押えられることはありません。

 

これは破産手続きだけに限らず、再生手続きおよび更生手続きの場合でも同じく隔離されるため、差し押えられません。

 

受益者が破産するとどうなるの?
受益者が持つ受益権は、受益者の「財産」として扱われるため、受益者の一般債権者は受益権を差し押えることができます。そのため受益者が破産した場合は、その受益権は差押えの対象となりますので注意しましょう。これは委託者=受益者の自益信託以外の他益信託の場合も同様です。

 

倒産直前で信託するとどうなる?
こう見てみると「なにも最初から信託しなくても、会社が危うくなってから信託すればいいのでは」と思うかもしれませんが、倒産直前でこの倒産隔離機能を使う目的で信託をすると、「詐害信託」と指摘される恐れがあります。

 

このような債権者を害する目的でされた信託については、債権者が裁判所に信託の取消を請求することができるため、倒産隔離機能は機能しなくなります。

 

さて、これまでが別事業を始める際に、財産である収益不動産を守るための家族信託を使った倒産隔離について話をしました。特に別事業をしない方、賃貸経営のみを事業として行っている場合に家族信託を使って倒産隔離ができるかという話をします。

 

不動産経営者が倒産隔離をどう考えるか
我々は、REITのような商業信託を利用したことはなかなか難しいことになります。通常あるとすれば、個人の不動産を家族信託にして、息子や娘を受託者として賃貸経営をすることになります。

 

その時には、個人の不動産に借入があれば、当然家族信託になったとしても、借入については、併存的債務引き受けを受託者(息子・娘)が行い、保証人も引き続きとられることになります。

 

そのため、他の事業で倒産しても、債権者が家族信託している不動産に手を付けられないということがあったたとしても、家族信託している不動産の借入が返済できなくなれば、息子や娘、引いては賃貸経営者が保証人となっていれば、返済から免れられるわけではないといことです。

 

つまり、通常の不動産保有と信託受益権の保有で、特段変わることはないのが基本です。

 

仮に、不動産物件がとても良好な案件で、借入が物件評価の半分にも満たないという場合には、保証人不要で、信託受益権を担保にとれば、リスクを担保できる場合はあるかと思いますが、レアなケースと思われます。

 

したがって、銀行は、通常給与収入や金融資産を背景に融資をしますので、信託受益権にしたから、個人の財産には手をつけられなくて済む倒産隔離ができるわけではありません。

 

まとめ
・別の事業の倒産から隔離するために、不動産を家族信託することには意味がある
・収益不動産が複数あったり、収益不動産の借り入れが多額にある場合、信託受益権にしても保証人を確実に取られ、返済から免れることができるわけではありません

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