高齢の不動産オーナーは、認知症対策が必須

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家族信託のメリット・デメリット

家族信託によって委託者から受託者に信託された財産は、受託者が管理運用することになるわけですが、受託者が自由自在に財産を売却したり新規で投資したりできるわけではありません。信託は、目的や管理運用方法の取り決めをした上で信託するため、それらに準じて管理運用する義務を負っています。

 

また、受託者は信託財産の管理にあたって、適正な管理を行なうために自己の財産とは明確に分別して管理する責任を負います。これを「分別管理義務」と言います。

 

このように家族信託は、たとえ委託者が受託者に信託したとしても、一定のルールのもと管理運用してもらえるためとても安心です。では、家族信託には他にどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

 

家族信託のメリットとは

 

@:アパート経営者が認知症になった場合でも、財産の管理処分が可能
ここが私の一番伝えたいポイントです。家族信託を利用していれば、万が一アパート経営者が認知症になったとしても、その後の家賃集金や建物の維持修繕、さらには管理会社との管理委託契約の締結など、賃貸経営に関連する一切の業務は、受託者である家族が「受託者の名前」によって管理、処分することができます。

 

A:委託者または受託者が破産した場合でも、信託財産を差し押えられない
よく破産回避、破たん回避と呼ばれるものです。信託した後に委託者が破産したとします。そうなると破産者の財産は差押えの対象となりますが、信託財産については「受託者に属する」ことになるため、差押えの対象となりません。

 

また、反対に、今度は受託者が破産したとします。先ほども言ったように、信託財産は「受託者に属する」ため、普通に考えると信託財産は差し押えられそうな感じがしますが、実は信託財産は受託者の固有の財産からは「独立した財産」として扱われます。つまり、たとえ受託者が破産したとしても信託財産が差し押えられません。

 

これを「倒産隔離機能」と言い、信託の一つのメリットとなっています。

 

B:信託契約は柔軟な設定が可能
例えば、遺言書によって自分の財産の相続先を指定する場合、自分の死後の一次相続の時点については遺言による指定は有効ですが、自分の財産を相続した人が死亡した際に発生する「二次相続」の時点については、遺言書で指定ができません。

 

つまり、夫が遺言書によって財産の移転先を指定できるのは、自分の死後の相続の時だけであり、仮に妻が死亡したときに妻から長男への相続を夫の遺言書によって指定することはできないと言うことです。この場合は、妻の遺言書の内容に従うことになります。

 

これに対し、家族信託を利用した場合は遺言書では実現不可能な二次相続時の問題についても、信託契約によって柔軟に設定することが可能なのです。信託契約では信託財産から得られる利益を受け取る「受益者」が死亡した場合に備えて、次の受益者を予め指定しておくことができます。

 

例えば、アパート経営をしている人が、そこから得られる家賃収入を妻、そして妻の死亡後は長男、その後は孫、と言った形で受益者の死亡を受益者変更事由として信託することで、事実上二次相続以降まで財産の帰属先を設定しておくことができるのです。

 

このような信託を「後継ぎ遺贈型の受益者連続型信託」と言います。この機能を使えば、なんとまだ生まれる前の子供や孫にまで受益権を指定することも可能になるのです。

 

家族信託のデメリットとは
このようにメリットの多い家族信託ですが、利用に際して一定のデメリットもありますのでよく覚えておきましょう。

 

@:受託者との信頼関係が大前提
信託契約は「信じて託す」わけですから、委託者と受託者の信頼関係が何より重要です。家族信託においても、完全に信頼できる家族がいなければそもそも家族信託を利用することはできません。

 

なお、受託者に多少の不安がある場合は、信託監督人をつけるという対処法もあります。例えば、受益者が未成年や高齢者である場合など、受益者が受託者を自ら監督することが難しい場合に利用します。

 

A:成年後見や遺言でなければできないこともある
信託では信託財産の管理運用については受託者が行なうことができますが、成年後見人のように、本人に代わって身の回りの世話や一切の契約ごとの管理を包括的に行なったり、本人のした契約を取り消したりという成年後見人独自の権限はありません。

 

そのため、広く認知症の家族を保護するためには、やはり成年後見を利用する必要があります。また、遺言書の場合は財産そのものの相続先を指定し、相続させることが可能です。

 

これに対し信託の場合は、良くも悪くも信託契約の管理運用方法に拘束されることになります。

 

B:遺留分の問題
信託の問題といえば、遺留分の取り扱いと言われるほど、遺留分で揉めます。相続発生時に、信託契約の内容が他の相続人の遺留分を侵害する恐れがあります。遺留分とは一部の法定相続人に認められている遺言書によっても侵害できない保護された相続分であり、これを信託契約によって侵害してしまう恐れがあります。

 

万が一遺留分を侵害すると、侵害された法定相続人から遺留分減殺請求をされる恐れがあります。こうなると家族間で、争いの争続となるので、遺留分には配慮した信託か、家族に事前に話をしておく必要があるでしょう。

 

まとめ
・高齢の不動産オーナー、賃貸経営者には、デメリットを大幅に上回るメリットがある
・収益不動産の経営が継続できる点からも家族信託を使うことのメリットは大
・デメリットについては、解消できる内容のため、最初の家族信託を実施するときに、手を打てばよい

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