法人化のデメリット
法人化にはメリットもありますが、少ないながらもデメリットがあります。法人設立費用や一部の税金が赤字でも掛かったりするデメリットもありますが、法人が個人ではないため、自分で好きなようには法人のお金が使えません。
法人のお金は勝手に使えない
個人事業の場合は、簡単にいえば、家賃収入から経費を引き、納税後の手取りが直接個人の財布に増える形になります。家賃が多かったり、経費が少なくなると手取り収入が増えるという関係になります。そのため、賃貸事業を拡大し、成功すると、たくさんの手取り収入が増えることになります。
これに対して法人の場合は、売上から経費を引き、納税後の手取りは剰余金となります。剰余金は会社に蓄えられますが、社長の給料ではありません。社長の給料は、売上から役員報酬として、経費の中に含めて支出していかないといけません。法人のお金を勝手に使うと、業務上横領となりまして基本は犯罪です。
そのため、社長が法人のお金を個人的に使いたいのであれば、役員報酬を設定しなければなりません。役員報酬は、最終的な利益の前の段階で設定することになります。最終的な利益の水準がわからない段階で、社長の報酬を決める必要があります。これが結構難しいのです。
そのため、法人の役員報酬は決算や利益予測を考慮して保守的に算出することになります。つまり、個人事業主では家賃収入から経費を引いたものがそのまま手取りの収入ですが、法人での役員報酬は個人事業主よりは低くなりがちです。当然ながら家賃が年度内で上がったりしても役員報酬を変えることができません
賃貸事業を法人化して、使えるお金が減ったと嘆くオーナーがいます。だからこそ、法人でしかできない節税手法を駆使して税金を抑えたりするノウハウがないと、なんのための法人化かわからなくなります。また、この給与所得控除、法人の利益が出すぎると、控除してもらえなくなるのです。
増税の一環でオーナー企業が狙いうちにされているのですが、条件は色々とあるのですが、法人所得と役員報酬=1,600万円超が3年間続くと役員報酬の給与所得控除がなくなるという制度です。給与所得控除が受けられないと、法人化の意味がだいぶなくなりますので、この水準に近づきそうであれば、別法人で収益不動産を買うことも検討した方がいいでしょう。
法人の設立費用
法人設立には、概算として25万~30万程度の費用がかかります。
支払先 | 項目 | 一般の定款認証 | 電子定款認証 |
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公証役場
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定款印紙税 | 40,000円 | 0円 |
定款認証手数料 | 50,000円 | 50,000円 | |
法務局 | 登録免許税 | 150,000円 | 150,000円 |
行政書士 | 定款作成等 | 100,000~150,000円程度 |
赤字でも税金が掛かる
法人には、「法人住民税」が課税されます。この法人住民税は、所得がなくても法人が存在するだけで課せられる税金があります。これを均等割といいますが、中小企業(資本金1000万以下)であれば、赤字でも7万円かかります。
損金算入に一部制限がある
損金算入されない支出の代表的なものに「交際費」があります。
基本は、資本金1億円以下の法人では600万円までの「交際費」は、その10%は損金と認められません。
?経費=会計上の経費
?損金=法人税法上、経費として扱えるもの
複雑なので忘れてもらって構いませんが、会計上の経費と税法上の経費に差があるということです。会計上は経費にできても税務上は経費にできないので、納税額がアップすることになります。税務上、必要経費となるかどうかを意識しないといけないところが、難しいポイントになります。
但し、平成25年税制改正により、中小法人の年800万円以下の交際費が全額損金算入されることなりましたので、賃貸事業者の多くは、全額の損金算入されることになっています。
まとめ
法人を作った後で後悔するのは、法人のお金を勝手には使うことができなくなることです。そのため、法人化を進める際には、どのように個人に効果的に資金を還流していくかを考えておいた方が良いでしょう。役員報酬、旅費交通費規定、法人保険などいろいろな仕組みがあります。