火災保険の見直しについて

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火災保険の見直しについては、メリットがあるように見えますが、隠れたデメリットがあることを知らないと損をすることになります。

 

なぜ保険が値上がりしていくのか
台風の巨大化による浸水、ゲリラ豪雨、地震の頻発と、過去の損害発生が今まで想定していた発生確率よりも大きく上昇してきているからです。現状の保険料では、損害保険会社の採算が合わなくなってきたことが理由です。

 

そのため、損害保険会社は、リスクを織り込むため、保険料を値上げしていくこと、そして、いままでは36年の長期の保険契約ができましたが、今後は10年までの保険契約となります。これは、損害発生確率が変化していく中で、36年もの長期契約が難しくなったためです。

 

 

見直しをする場合によく言われるメリット
火災保険、地震保険の値上げは、今後も実施されるでしょう。そうなると、みなさんは、火災保険、地震保険の掛け金が上昇するとなり、あわてて見直しをされる方がいます。そのような方は、保険会社の代理店、似非コンサルタントの餌食になる可能性があります。

 

よく言われるのが、

 

・長期契約すればお得である

 

 

・長期契約で掛けていると、返戻金もあるので、返戻金も考えればさらにお得 

 

という点かと思います。但し、一部に大げさに捉えられていると思います。

 

 

長期契約すれば本当にお得か
まず、長期契約できるのは、火災保険です。地震保険は、5年までしか契約できません。つまり見直しして効果がでるのは、地震保険以外となります。

 

【火災保険】
確かに、長期契約するとお得になります。なぜなら、火災保険料は長期契約の一括払いをするほど割安になります。最長の36年契約の一括払いでは、1年契約の約25年分の保険料で契約が可能です。割引率は全ての保険会社で同一とは限りませんが、目安として下記のようなイメージです。

 

25年契約 一括払い:26%前後の割引率
36年契約 一括払い:31%前後の割引率

 

ここまでを考えるととてもお得です。1年ごとに掛かる費用(2.7万)の36年間合計が100万とすると、36年一括だと70万ほどしかかからない計算になります。一見とてもお得にみえます。しかし、ここで重要なポイントが抜けています。

 

損害保険会社に、36年分の保険料を一括で払うことになります。不動産投資家にとって重要な資金を先に前払いすることになるのです。

 

ここで考えないといけないのは、その前払いで払った金額で得した利回りとその資金を自分で運用したときの利回りの差を考えないといけません。

 

36年間で得をする30%の割引率とはどれくらいの利回りなのかということを計算します。考え方をシンプルにするため、36年後の将来価値100万を現時点で70万で買ったという計算をします。

 

そうすると、利回りとしては、たったの1%です。利回りで1%で運用したのと同じような効果です。厳密にはやや複雑になるのですが、概ね1%の効果です。

 

いかかでしょうか。あなたは不動産投資家、賃貸経営者です。1%以上の利回りで運用できるのではないでしょうか。

 

つまり、損害保険会社に一括で保険料を前払いする利回りよりも、株式などの金融資産投資や不動産投資の利回りのほうが、圧倒的に利回りが高いのです。

 

そのため、長期で割引であるからといってさほど飛びつくような話ではないのです。

 

【地震保険】
地震保険は、5年を超える契約を結ぶことはできません。そのため、地震保険では、5年の一括で効果を狙う以外はありません。また、木造とは違いRCなどの耐火構造は火災保険金額が安く、地震保険の割合でいくと、地震保険の方が高いエリアがあります。

 

その場合、地震保険の見直しは長期で見直しができないため、火災保険しか長期で見直すことができません。RCの多くは、火災保険で長期で3割下がるといっても、火災保険部分しか効果がないため、全体としては、1割程度しか効果がでない場合があります。

 

したがって、火災・地震保険料全体で見ていくとなると、火災保険を36年間前払いしても効果としての利回りは、0.3%〜04%/年しかないケースがあります。

 

こうなると、見直し事態にそれほど大きなコストメリットがあるとは言えないでしょう。

 

 

長期契約すると損が発生する特約関連(施設賠償保険・機械的電気的事故等)
火災保険を長期で見直す時に一番問題なるのが、特約部分です。5年契約までなら、火災保険の特約としてつけられるのですが、5年を超える契約になると特約ではなく、単品の商品として契約する必要があります。

 

例えば、5年を超える火災保険を超えると、施設賠償保険が特約から外れます。特約扱いから単品の商品として施設賠償保険に切り替えると大幅に上がります。特に、エレベーターがついていると数倍まで保険料があがります。

 

したがって、火災保険を長期で見直すときには、特約で外れる施設賠償保険等の金額をあわせて考慮する必要がああります。火災保険単体では、3割下がっても施設賠償保険を考慮すると、36年間でみても1割引きにもならないケースも多くあるのです。

 

火災保険の見直しは、火災保険に加え、特約の見直し=保険料増加を加味して判断する必要があります。

 

RCなどの耐火構造でエレベーターのある物件では、ほとんど効果は出なくなるでしょう。

 

 

つまり、長期で保険を見直しても、投資効果を利回り換算すると、効果のあるケースは少ないと言えます。

 

 

返戻金があると本当にお得か
最後に、返戻金があるのでそれでも得かどうかについて解説します。シミュレーション上は、35年で掛けた保険を5年で解約すれば、返戻率からすると1年毎の掛け金はさらに安くなります。これは計算上そうなるのは事実です。

 

たとえば、大手保険会社の35年一括で支払った時の5年後の返戻率は、

 

・5年経過時点:89%

 

となっています。

 

35年のうちの5年分の保険料を払ったということは割合にして14.2%分に相当します。それが、11%しか引かれず、89%分が返ってくることになります。

 

35年の一括払いで3割引きで割安に保険に入り、さらに、解約時点の返戻金も考慮すると単年度あたりの効果がとても大きくなります。

 

しかし、ここで考えないといけないのは、賃貸経営者として、あなたは、返戻率を計算して売却をコントロールすることができるかどうかという点です。

 

売却は、市場のマーケットに左右されるので数年で売ることもあれば、長期で保有することもあるのです。最初から売却する時期を決めていればいいですが、それができないのであれば返戻率を織り込んで得かどうかを判断することはできません。

 

 

今後10年超ができなくなった火災保険での考え方
今後、10年までしか火災保険が掛けられなくなった場合の不動産投資家、賃貸経営者の考え方ですが、よほど資金に余裕がない限りは、1年契約もしくは5年契約の単年度の分割払いをお勧めします。

 

10年を一括で払う場合には、火災保険の特約(施設賠償保険、電気的・機械的事故保険)を単品の商品で契約しないといけないデメリットを考えると火災保険を5年から10年にするコストメリットはほぼないといえます。

 

5年契約の場合は、一括払いか単年度の分割払いを選択できる保険会社が大半です。当然一括払いの方が割引率が大きいですが、前原した利回りはたいしたことないので、単年度の分割払いの方が投資家としてはより効果的に資金を使うチャンスがあると言えます。

 

まとめ
・長期契約の割引率も利回りからすればたった1%程度
・返戻率を考慮した投資など転売主体の会社以外難しい
・今後の火災保険は、5年契約の単年度の分割払いがお勧め

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