保証会社の理解:デメリットもある
最近では家賃保証会社が普及したことで、今時の物件はほとんどが保証会社利用が必須になりつつあります。家賃保証会社の普及は、家賃滞納による賃借人と賃貸人との間のトラブルの防止という観点からすると良いことでもある反面、一定のデメリットも生じているのもまた事実です。
そこで今回は、家賃保証会社の普及によるデメリットについて解説したいと思います。
入居者の初期費用の負担増
大家側のデメリットではありませんが、従来までは、両親や兄弟姉妹などの連帯保証人が立てられれば、あえて家賃保証会社を利用する必要はありませんでした。
しかし、最近では連帯保証人が容易に準備できる人に対しても、関係なく家賃保証会社の利用を義務付ける物件が増えたため、これにより保証会社に依頼する際に支払う保証料が賃借人に負担となってのしかかっています。
物件によってはその分、礼金などを低めに設定しているケースもあるようですが、人気物件の場合は、やはり礼金に加えて家賃保証会社の保証料が負担となってしまいます。
人を見る目が育たない
家賃保証会社を利用するということは、入居審査自体を家賃保証会社の審査に委ねているような状態になります。そのため、大家さんや管理会社は昔に比べて直接入居審査をする必要性が減ってきたため、これにより人を見て審査する独自の感性が育たないとの懸念がされています。
これが大きく影響していく事態が進んでいくものと思います。保証会社を通ったから入居OKのように機械的に行っていると、問題のある不良入居者を入居させてしまい、トラブルになるケースが増えてきているからです。
管理会社のスキル低下
そして、現在の状況としては、管理会社のスキル低下に直結しています。家賃保証会社が行なっている審査や、滞納発生時の家賃回収業務は、本来管理会社が行なっていたものです。
つまり、家賃保証会社の利用が増えたことで、管理会社としての業務は減ることとなったため、これにより管理会社の業務スキル全体が低下してしまうというデメリットがあります。これを防ぐためには、管理会社も保証会社とは別に独自で入居審査をするといった方法がとても効果的ですが、多くの会社では、行っていないもの同然の実態になりつつあります。
いままでも管理会社のスキルは、それほど高くはなかったのですが、保証会社の利用有無により、大家には保証会社が通りましたの一言で終わらせてしまう管理会社もいるのが実態ですので、ここは管理会社としての判断基準を持っている会社を選択するようにしましょう。
早期退去のリスク
家賃保証会社は滞納発生時の対処が迅速である反面、それが理由で入居者がプレッシャーを感じすぎて、早期退去につながってしまう恐れがあります。
これは、いままでは、管理会社や大家が家賃の督促をする際には、入居者の話も聞いて分割払いに応じるなど丁寧なコミュニケーションが行われていたケースが多かったのですが、この関係がなくなり、ほぼ自動的に保証会社が入居者に連絡を取り、家賃を回収するようになったため、入居者もプレッシャーを受けるようになっています。
家賃を滞納する人の共通点とは
入居審査を毎月何件もこなしていると、入居者の良し悪しというのは、電話に出て一言二言会話をするだけであらかた想像できるようになります。入居後家賃を滞納しやすい人の共通点としては、「言葉使い」と「連絡のつきやすさ」の2つがあります。
まず、入居審査で電話した際に、相手の言葉使いが荒っぽく感じたり、あからさまにイライラしているような場合は要注意です。こういったタイプの人は、滞納率が高いばかりか、万が一滞納した際の回収に苦労します。
また、入居審査の際になかなか電話に出ない人は、家賃が遅れ気味になる傾向にあります。この2つのポイントだけで、家賃を期日までにきっちり払ってくれる几帳面な属性かどうかはあらかたわかるのです。
このような方は、そもそも入居させない方向が一番良いと判断するのかどうかは、管理会社および大家のスキルとなっていくでしょう。
連帯保証人ならではのメリット
家賃保証会社は確実に家賃を保証してくれるため、大家さんとしては心配することは何もないように感じるかもしれません。けれども実は家賃保証会社にはできなくて、連帯保証人ならできることがあるのです。
家賃保証会社の保証範囲が拡大したとはいえ、基本的に保証されるのは全て「金銭債務」です。つまり「お金」の保証のみとなります。しかし、建物の賃貸借契約は継続的な契約ですから、長い間居住していると金銭問題以外にも様々な問題が発生します。例えば「騒音問題」や「ゴミの分別問題」などがその代表例です。
保証会社を利用している賃借人が、騒音問題やゴミの分別問題で他のお部屋から苦情が出たとしても、それについて保証会社は完全にノータッチです。ですから、大家さんとしては本人に直接もしくは管理会社が電話などで注意を促し、それでも直らなければそれ以上の対処法というのは法的手段以外にありません。
しかし、連帯保証人がいる場合については、入居期間中の一切の債務について保証を確約しているため、金銭債務に限らずこういった騒音問題やゴミの分別問題などで契約者が他の入居者と揉めた場合に、連帯保証人の方から本人に対して忠告するよう依頼をすることもできます。
このように生活上の様々な問題について、その都度連帯保証人もその解決のために協力させることができるため、その点については家賃保証会社にはないメリットが存在するといえるでしょう。
家賃保証会社と連帯保証人ダブルでつけるのがベスト
ちなみに、家賃保証会社と連帯保証人は二者択一というわけではありません。保証会社の中には、保証委託契約を結ぶ際に「連帯保証人ありプラン」と「なしプラン」があるケースも多く、それによって保証料が変わることもあります。
最も確実なリスクヘッジとしては、家賃保証会社と連帯保証人の両方をつけることが理想的であると言えるでしょう。
まとめ
・保証会社が万能ではないこと
・入居審査が保証会社任せになっていると、入居者の質は下がっていく
・リスクヘッジとして、連帯保証人もつけておくことがお勧め
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