不動産投資の安全性を見極める数字の指標がある

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1-1〜2-4までお読みいただくとある程度お気づきの方もいるかと思いますが、不動産投資に成功するか失敗するかの勝敗は、ほとんどの場合「投資時点」でほぼ確定します。よって、不動産投資で失敗しないためには、投資時点でその不動産投資が安全か、それとも危険かを見極めることが必要になってきます。そこで第3章では、これを見極める重要な3つの数字の指標について、詳しく解説したいと思います。

 

 

そもそも危険な投資とは

 

安全な投資を見極めるためには、「危険な投資」が具体的にどのようなものなのかについて、よく理解しておく必要があるでしょう。危険な投資とは、簡単に言うと、次のような状態をいいます。

 

短期、中期でキャッシュフローが赤字になってしまい所有を維持することが困難

 不動産投資で物件を維持していくためには、ローンを返済してもある程度手元にお金が残っていくような、安定したキャッシュフローが必要です。これが、投資時点からすでにキャッシュフローが赤字状態ですと、中長期的に見ても当然キャッシュフローは簡単には改善しないため、物件を所有しているだけで、手元からどんどんキャッシュアウトしていく、最悪な状況となってしまいます。

 

出口で残債が消えず、売るに売れない

 となると、取るべき手段は売却するしかありません。株式投資で言うところの「損切り」のような状態です。しかし、物件を売却するためには、売却価格でローン残債を一括返済する必要があります。けれども、購入直後については残債と同等の金額で売り抜けることが難しい場合も多く、売るためには一括返済に不足する金額を現金で用意しなければならず、すぐに売りたくても売れないという、どうにもならない状況を迎えてしまうのです。

 

 

危険な投資を回避するための3つの「安全性」とは?

 

このような危険な投資を回避するためには、次の3つの「安全性」を投資する前の段階でしっかりと確保することが重要です。

投資時点の安全性

投資する段階でキャッシュフローが悪い投資は、中長期的に見てもそこから改善することは難しいでしょう。よって、まずは短期的にみて一定以上のキャッシュフローが確保できることが、安全な投資の条件となります。

 

中長期の安全性

中長期の安全性を確保するために重要なことは、「税引き後キャッシュフロー」です。税金を考慮する前の「税前キャッシュフロー」については、多くの方が気にされていますが、本当に重要なのは所得税などを控除した後の「税引き後キャッシュフロー」です。

 

不動産投資は減価償却が終わるタイミングで、一気に利益が出て税負担が重くのしかかるため、事前に中長期的にシミュレーションして、それでも黒字を維持できることが、安全な投資の条件となります。

 

出口の安全性

不動産投資の安全性を確保するためには、不動産投資の「出口」、つまり「売却」できることが条件となります。先ほどの危険な投資のように、その時の市場売却価格がローン残債を下回ってしまうと、別途現金を用意しない限り売れなくなってしまいます。そこで、投資段階でおよそどの時点で「市場売却価格=ローン残債」となるのかを見極めておくことで、将来の出口を予め予測することができるのです。

 

 

3つの安全性を見極めるための、3つの指標とは?

 

安全な不動産投資を見極めるためには、この3つの安全性について、購入前に入念なシミュレーションをする必要があります。そこで次に、それぞれの安全性をシミュレーションするために必要となる、重要な3つの指標について解説します。

 

@投資時点の安全性は「返済比率」50%未満

 

不動産投資のキャッシュフローをシミュレーションするうえで、最も重要な指標が「返済比率」です。返済比率とは、「毎月の家賃収益に対する融資返済額の比率」のことをいいます。例えば、月額家賃収益が100万円で融資返済額が50万円であれば、返済比率は50%となります。

 

この返済率が高くなればなるほど、毎月のキャッシュフローが苦しいということになります。私が安全な投資の目安として考えているのが、「返済比率50%未満」です。返済比率が50%を超えると、手元に残るキャッシュが非常に少なくなり、賃借人の入退室などで敷金の返還や原状回復工事をすると、すぐに赤字になってしまう恐れが出てきます。

 

このように投資の安全性を確保するためには、返済比率を50%未満に抑えることが非常に重要なのです。

 

しかし、すでに不動産投資をしている人であればわかるかもしれませんが、返済率50%未満というのは、決して楽な数値ではありません。私も実際にセミナーの参加者から「それはわかっているんだけれど、現実問題返済比率50%未満は難しいのでは」と質問されたことがあります。

 

確かに、そう簡単に返済比率50%未満を実現することはできないでしょう。ただ、私がその参加者の方にお伝えしたのは、「実現できないからといって、焦ってほかの物件を買う必要もない」ということです。

 

焦って返済比率50%以上の投資をすれば、それは「危険な投資」であり、失敗してしまう可能性が出てきます。不動産投資は成功するからこそやる意味がありますから、失敗しそうな物件しかなければ、そのときは「投資せずにしばらく様子を見る」という判断をすることも、不動産投資家には必要なのです。

 

ただ、最近の不動産市場を見ていると、返済比率50%未満は決して不可能な数値ではないといえます。関東近郊でも、返済比率50%未満を実現できそうな物件は、ネットでもちらほら出てきています。

 

A中長期の安全性は「税引き後キャッシュフロー」で決まる

 

中長期の安全性とはすなわち、「物件保有期間中の安全性」を意味しています。この期間の安全性を維持するためにポイントとなってくるのが「税引き後キャッシュフロー」です。先ほどの返済比率が50%未満であれば、投資時点から短期的には、おそらくなんの問題もなく推移するでしょう。

 

ところが、ある時点からキャッシュフローが一気に悪化してくるタイミングがあります。それは「減価償却の終了」です。新築の場合、木造であれば22年、鉄骨であれば34年、鉄筋コンクリートであれば47年という法定耐用年数があり、そこを過ぎると減価償却費が経費として計上できなくなるため、帳簿上はどんどん黒字が出るようになります。

 

そうなると当然黒字となった不動産所得に対して「所得税」や「住民税」が課税されるようになるため、これによってキャッシュフローがどんどん悪化していくのです。あえて「税引き後」と表示しているのは、税負担が増えるからです。

 

・不動産会社は「税前キャッシュフロー」しか教えてくれない

 

おそらく多くの方にとって、「税引き後キャッシュフロー」という言葉自体が初めてだったのではないでしょうか。それもそのはず、不動産会社がこの税引き後キャッシュフローまで計算してシミュレーションしてくれることはまずないからです。不動産会社が提示してくるキャッシュフローシミュレーションは、税金を引かれる前の「税前キャッシュフロー」なのです。

 

ただ実際は、中長期的に保有をしていると、必ず税引き後キャッシュフローが一気に悪化してきます。このことを投資時点で知っておかないと、失敗に向かって突き進むことになってしまうのです。

 

不動産投資の途中で失敗しないためには、投資時点において「税引き後キャッシュフロー」を中長期的な期間でシミュレーションして、減価償却が終わる頃になっても、税引き後キャッシュフローが黒字の状態で維持できる物件を購入することが重要なのです。

 

 

B出口の安全性は「残債利回り」で判断する

 

投資物件の売却価格は、その物件の「利回り」をもとに決まってきます。物件を売却するためには、市場が求めている価格で売りに出す必要があり、そしてその価格をもって、ローン残債を一括返済できることがポイントになります。そこで重要な指標となるのが「残債利回り」です。

 

残債利回りとは、「不動産投資の年間収益の融資残債に対する割合」のことをいいます。すなわち、売却価格でローン残債を一括返済するということは、「残債利回り=買主の希望利回り」とならなければ売ることができないということです。

 

ローン残債は返済を続けていくことで徐々に減っていくため、所有を継続していれば、必ずどこかで「残債利回り=買主の希望利回り」の売れる状態がやってきます。出口の安全性とは、どれだけ早くこの売れる状態がやってくるのかという点を基準に考えます。売れる状態が早く到来すればするほど、万が一のことがあってもすぐに売り抜けることができるため、その投資は安全だといえます。

 

・残債利回りは金利に大きく左右される

 

残債利回りは低金利で借りれば借りるほど、元金の減りが早いため、早い段階で残債利回りが市場の求めている希望利回りを上回り「安全領域」に到達することができます。

 

けれども、4%以上の高金利で借り入れをしている場合、返済当初は元金がなかなか減っていかないため、残債利回りも低いままで、しばらくの間は売れない状態が続くことになります。そのため、残債利回りを早い段階で良好な状態にもっていくためには、当初の借入金利がなにより重要なのです。

 

投資時点の返済比率は、簡単に見極められるようになりますが、2の中長期の税引き後キャッシュフローの安全性と、3の出口の安全性は相互密接にかかわってきますので見極めが難しいです。

 

出口の安全性が担保されるところまでは、最低限、「中長期の保有期間の安全性=キャッシュフローの黒字」が維持できないと、出口の売却を向かえるまでにリスクを負うこととなります。よって、出口の安全性がある程度担保できる時期までは、中長期のキャッシュフローを黒字で維持できるようなシミュレーションが成り立つ投資こそが、「安全な投資」ということができるのです。

 

構造ごとの傾向を理解しよう

 

ここまで解説してきた、返済比率、税引き後キャッシュフロー、残債利回りの3つの指標は、いきなり計算しろと言われても、初心者にはかなり難しいでしょう。そこでまずは大枠として、物件の構造ごとにどのような傾向があるのかイメージを掴んでみましょう。

 

新築1棟RCの場合

 ・投資時点の安全性◎ 
  30年以上の長期で融資を組むことができれば、毎月の返済額が抑えられるため、比較的実現可能です。

 

 ・中長期の安全性〇
  利回り7%以上を確保できれば、概ね20年以上は黒字を維持することが可能でしょう。

 

 ・出口の安全性〇
  キャッシュフローが黒字の間に、安全性が確保しやすい傾向です。

 

中古1棟RC(※築22年まで)

 ・投資時点の安全性◎
  中古でも25年以上の期間で融資を受けることができれば、返済額が抑えられるため、安全性は確保しやすいです。

 

  ・中長期の安全性〇
   利回り9%以上を確保できれば、概ね20年以上は黒字を維持することが可能でしょう。

 

  ・出口の安全性〇
   キャッシュフローが黒字の間に残債が減っていくため、安全性が担保しやすいです。

 

新築木造アパート

  ・投資時点の安全性〇 
   融資を30年以上で引くことができれば、短期的には返済比率が低く抑えられるため、安全性を確保できます。

 

  ・中長期の安全性×
   木造は減価償却も早いため、利回りが低いと、中長期的にはキャッシュフローが赤字になる可能性があります。

 

  ・出口の安全性×
   木造は購入後の値下がり幅が大きいため、保有期間が20年を超えてこないと、出口の安全性が担保できません。

 

築古木造アパート(※土地値≒売価)

  ・投資時点の安全性×
   長期間の融資が組めないため、どうしても返済比率は高くなってしまいます。

 

  ・中長期の安全性△
   5年目以降は減価償却がなくなり、利益が出てしまい、税引き後CFは大きく悪化する可能性があります。  

 

  ・出口の安全性〇
   土地値については安定しているため、当初から土地値で購入できていれば、出口の安全性は確保しやすいです。

 

 

このように物件の構造によっても、3つの安全性の傾向に大きな違いがあるため、まずは最低限この傾向を頭に入れましょう。

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